どうして欲しい?って事は、もしかして手伝ってくれる人なのかな……今までの犬くんと猫さんみたいに。頼んだら、一緒に探してくれるのだろうか。

出来る事なら手伝って貰った方が良いのだろう。……でもなんか、なんだろう。微笑みを浮かべたまま、目の前の少年はピクリともせず私の答えを待っている。その姿がどこか妙である。何か可笑しい、ような……。


「ねぇ、どうして欲しい?」

「!」

「どうして欲しいか言って」

「……え、えっと……」


何か可笑しい。この人は何だか怖い。ゴクリと息をのんで、無意識に私が一歩後退った、その時だった。


「言えよ」


ぐずぐずと躊躇う私に痺れを切らした様に、少年の口調が変わった。


「言えって、早く。君、一人なんだろ?」


しんと静まり返る森が、彼の息遣いを、声を、表情を、全てを際立たせる。


「一人は寂しいよな? そうだろ? だから言え。早く——殺してくれって、言え」

「!」

「言えっ‼︎」


彼が声を荒げた瞬間、突き飛ばされるように私の足は駆け出していた。この人はヤバい! このままでは危ない! 頭で何かを考える前に身体が反応していた。この靄の中、走りづらい地面をただひたすらに走る。逃げなければと、危機感が背中を押して、それを頼りに走り続けた。

体験した事のない恐怖が、私の後を追いかけてくる。