身に覚えのあるこの状況に、これはまずい、戻らなければと一歩隣にあるはずのレンガ道を探す。けれど、そこにはもう湿った地面があるだけで、道であった痕跡は綺麗さっぱり無くなっていた。
「なんで……?」
こんな事になるなんて。もう、元の道へは戻れない。元の森にも戻らない、そう感じた。だってここはどう見ても一番始めに立っていた場所。何度目かの夢でも訪れた、あの、嫌な雰囲気の場所。あの子の死にたい気持ちが反映された、二人以上で行動するよう猫さんに言われた、あの……。
「ねぇ」
「!」
飛び跳ねる勢いで振り返ると、いつの間に現れたのだろう、そこには背の高い男の子が立っていた。大人の人では無いと思う。私と同じくらいの年齢の、黒い髪をした色白で細身の少年だった。
「君、なんでここに居るの?」
「え? ……と、人を探していて……」
「そうなんだ」
にっこりとした少年は、笑顔を絶やさない。「ねぇ」と、また同じ声掛けをする。
「君、どうしたいの?」
「どう……?」
「うん。どうしたい?」
「……あの子を見つけたい、です」
「じゃあ、どうして欲しい?」
「……」