「これは、ここに無かったものなの?」
「そうだよ! ここはずっとこの池だけ。今日急に現れたんだよ」
「え、そうなの……? じゃあ犬くんはいつからここに居るの?」
「ずっと前だよ。ず〜っと前」
「……そうなんだ……」
犬くんの言うずっとがどのくらいかは分からないけれど、これは夢の話だ。とにかく犬くんはずっと前から居たという事で、スワンボートが現れたのが今日からという事。それが今大事な事。
猫さんといい、犬くんといい、一体どういう存在なのだろう。あの子の夢の相棒なのかな。夢の中にずっと存在するのなら、あの子にとってとても大事な存在であるのは間違い無いだろう。このスワンボートも今日現れたとしても、存在するべくしてここに在るものだと思うけど……。
「今日現れたと言ったら、みのりちゃんもだよね!」
「……え?」
こちらを見つめて微笑む小さな犬と目が合った。私が現れたのと同じ。私もボートも彼の夢の世界に今日現れた。
「きっとこのスワンボートは、みのりちゃんが乗りたかったからここにあるんだよ」
「私が乗りたかったから? でもここはあの子の夢なのに?」
「今はみのりちゃんの夢でもあるよ。だって今みのりちゃんは眠ってるんでしょ?」
ふと投げかけられたその言葉に、ハッと急に見えたものがあった。
「……そうか、私達の夢が繋がっているのだとしたら」