今の今まで忘れていたくらいだ。わざわざスワンボートのある場所を調べて乗りに行くなんて事はしないだろうし、一緒に乗りに行こうと誘える人も特に思い当たらなかった。
「ひとりぼっちで乗ってたらしょんぼりしたかもしれないけど、犬くんも乗ってくれたから。とっても嬉しい」
「僕も! 一緒に乗れて嬉しい!」
にこにこしてぶんぶん尻尾を振っている。本当に可愛い犬くんである。ついまた遠慮も無く撫でさせて貰う。ふわっふわである。
「みのりちゃん、ありがとう! スワンボートを教えてくれて!」
「いえいえ、どういたしまして……ん?」
スワンボートを、教えてくれて?
「あ、スワンボートの思い出をって事?」
「それもあるけど、このボートは今日初めて見たから!」
「……え?」
あれ? なんだ? また可笑しな事が起きている。