スワンボート乗り場までやって来ると、辺りに管理をしている人などは居なく、どうしようと迷っている間に犬くんはぴょんぴょんと勝手に乗り込んでいく。


「あ、勝手にダメだよ!」

「大丈夫大丈夫! 本人の意思なんだから」

「? 本人の意思?」


それはこの夢の主であるあの子がどうぞと言っているという事だろうか。この世界に存在するものなのだから、ダメだったら入れないように隠しておくはずかな……そういう事かな。

じゃあ大丈夫かと、あっという間に納得してそっと犬くんと同じボートに乗り込んだ。足元に自分で漕ぐ為のペダルがついていて、自転車のように漕いでいくみたいだ。


「よし、ちょっと漕いでみよう」

「頑張れみのりちゃん!」


あ、そっか。犬くんは足が届かないんだった。全ては私の力にかかっている。

一歩踏み出すと思ったより重くて驚いたけれど、グルグルと回るうちに慣性が働き軽くなっていった。風がボートの横を通り過ぎていく。あれ? と、そこでなんだか既視感。


「……私、スワンボートに乗るの初めてなんだけど、これがやりたかったんだ! っていう気持ちが今なんかすごくあるというか……この感覚を知ってた……知りたかった? ような、変な気持ち」