「……僕じゃダメかな? 猫じゃないと嫌? ……もしかして、犬は嫌い?」
私を見上げる可愛い犬は、三角の耳を下向きにしてしょんぼりとしてしまった。心なしかふわふわの毛もしょんぼりしたような気がする……その原因が私という罪悪感といったらもう……!
「そ、そういう訳じゃっ……何も言わないで急に居なくなったちゃったら、猫さんがびっくりするかなと思って……」
「でも、急に居なくなったのは猫の方でしょ?」
「あ……うん、そうなんだけど……」
「だったら大丈夫だよ! またひょっこり現れるって!」
すると、くるりと表情を変えた犬は、さぁ行こうと何も気にした様子も無くるんるん楽しげに歩き始める。その急変に戸惑いつつ、後ろ髪を引かれながも、結局私は言われるがまま彼の後ろをついて歩く事にした。
急に居なくなったのは猫の方でしょ?と言われたら、確かにそうかと納得してしまった。初めて会った時も見失ったと思ったら、いつの間にか彼は海に居た。その次の時もそう。いつも猫は急に居なくなる。
じゃあ急に現れたこの小さな犬は? この子に会うのは初めてだ。スワンボートに乗りたいと言っていたから、この子とスワンボートに乗ると何か変わるのかな。
とにかく何か展開が変わったという事だけは分かったけれど、新しいこの小さな相棒を信じていいのか、猫さんにいつになったら会えるのか、まだ次の展開への気持ちが着いて来なかった。