「この森は、アイツの死にたい気持ちが反映された場所。その願いを叶える為に、ここには黒い影が現れる」
「……黒い影?」
「捕まったらゲームオーバーの敵だと思えばいいよ。でも臆病だからこの家には近付かないし、二人以上居れば大丈夫だからあんまり僕から離れないように」
「……はい……」
そんなに怖い森だったとは……樹海って確かに自殺のイメージがある。初めて会ったあの子も確か、死にたいと言っていた。そういう場所だったのか、ここは。黒い影にはまだ会っていないけれど、あの時も今も、猫さんとかあの子が居たから。
「でもこの森を探すしかないんだよね?」
「いや、それは分からない。ここはアイツの世界だからいつでもどうにでもなる。今は樹海にこもりたい気分なんじゃない? 山の天気ぐらいころころ変わるから」
「そうなんだ……」
じゃあ今のあの子はまた、もう嫌だと全てを投げ出したい気持ちになっているという事か。もしかしたら泣いているかもしれない。早く見つけてあげないと。
「分かった。行こう」
「……話し聞いてた?」
「うん。だから行こう」
少しでも早く、安心させてあげたい。あの子の心の中に私を入れてくれたのなら。見つけてもらえるかもと少しでも期待してくれたのだとしたら。私はそれに応えたい。それもまた、私にとって初めての経験だったから。
扉を開けると、私は外の世界に一歩踏み出した。