まぁとりあえず座りなと、猫に促されるまま一番近くにあった椅子へ腰を下ろすと、黒猫はピョンとテーブルの上へ乗った。目線が近づいた分話しやすくなる。


「ここがアイツの夢の中なのは分かってるよね? なんて言われてここに来た?」

「僕を探してって。見つけられたら私の勝ちだって」

「そう。見つけられたら終わり、つまり見つけられるまでは終わらない。終わらないから、出る事も出来ない」

「……え?」


出る事も出来ない、だなんて。それってこの夢からという事? まさか、見つかるまで目が覚めないって事?


「でも、見つけられなかったらそれでもう終わりにしようって言われたよ。諦めるって言ってた」

「君が降参したらね。やめたくなったらすぐに言いなよ」

「そんな、やめないよ! 見つけるよ」


すぐに諦める気なんてさらさら無かった。私のやる気は十分なのだ。だって私は彼に会いたい。ここだけでなく、夢の外の世界でも。


「でもあっちは、君に知られたくないと思ってる。きっと見つかるつもりは無いよ」

「なんで? 見つけてって言ってるのに?」

「さぁ。複雑な乙女心に近いんじゃない? 面倒臭くて付き合ってらんないよ」