歩き続ける私達。果てしなく森が続くようにも思えた矢先、急に靄の奥に何かがぼんやり現れる。黒猫は真っ直ぐにその方向へ向かっていて、近づくにつれてはっきりと姿を現したそれは古い小さな家だった。
家の前まで来ると、猫は少し空いた窓から家の中へ入っていったので、私も入り口の扉からそっと中に入る事にする。
「お邪魔します……」
キーッと金具が音を鳴らしながら扉は開き、壊れないよう優しく閉めた。足を踏み入れるとギシギシと床が軋む。大分年月が経っているように思うけど、大丈夫かな……。
入ってすぐがリビングで、ダイニングテーブルとイスが置かれている。暖炉にお鍋が置けるようになっていたり、まるで御伽噺に出てくるお家みたいだった。奥にもう一部屋あるようなので覗いてみると、そこは寝室で、大きなベッドとドレッサーがある。しかしどれも年代物である。
「お客さんを呼べる状態じゃ無いね。こんな所に呼ばれちゃった君には可哀想な話だ」
「ここは誰の家なの?」
「誰の家でも無いよ。君が使っていいよと言いたい所だけど、これじゃあね……」
「いいよいいよ、すぐに探しに出るし。この場所がどういう所か教えてくれる為にここに来たんだよね?」
「……まぁその通りなんだけど、きっと君は思い違いをしてると思う」
「?」