「あーあ、こんな所に来ちゃって」
その声に、ハッと意識が覚醒した。見覚えのある景色だ。鬱蒼と茂る木々が怪しく、立ち込める靄が危機感の後押しをする……そうだ、ここはあの時の樹海。
「言ってやんなよ、迷惑だって」
長い尻尾をピシピシを地面に打ち付け、機嫌悪そうに言葉を発するのは、
「猫! え、嘘、猫さん?!」
消えてしまったと聞いていた、海に連れて行ってくれたあの黒猫。紛れも無く本物の猫さんだった。
「なんで? どうしてここに居るの?」
「それはこっちの台詞だよ、君がなんでここに?」
そう言われて、ようやく自分の立ち位置を思い出した。今ここにいるという事は、これは彼の夢の中なのだろう。つまり私は、
「あの子を見つけなくちゃいけない」
「……」
「猫さんは知ってる? 猫さんの飼い主の男の子を探さなきゃならないんだ。この森の中に居ると思うんだけど」
「……」
「ここ、あの子の夢の中で合ってるよね? 猫さんともここで前会ったもんね。そしたらこの森の事、猫さん詳しい?」
「……」
「……あれ? 猫さん聞いてる?」