「僕が連れてきてあげたんだからね」
「うん、ありがとう。今日は猫さんと探検しながら海に来れた、良い夢だった」
夏休みももう終わるのに特にこれといった思い出も無かったので、夢の中でくらい思い出が作れて良かった。所詮夢だからどうせ覚めてしまうし、本物では無いのだけれど。
リン、と鈴が鳴った。堤防をぴょんと猫が飛び降りた音だった。
「もう行っちゃうの?」
「こう見えてとっても忙しいんだよ」
「また会える?」
「どうかなぁ。猫は好き?」
「好き。いつも猫の動画見て癒されてるの。撫でてもいい?」
「どうぞ」
するりと寄って来た猫の頭を撫でると、金色の目を閉じて身を委ねてくれる。艶々で真っ黒な美しい毛並みだ。時折首輪に着いた鈴がリン、と鳴る。
「首輪の鈴、可愛いね」
「……」
気持ち良さげに閉じていた瞳が急に開き、ジロリと私を見詰める。目力が強い。