「君はいつも難しい事を考えてるね。魔法を使えるようになった後の事まで心配してるなんてすごい」
「いや、そういう訳じゃ……まぁいいや」
きっと真剣に読んでくれたのだ。こんなにしっかり夢に反映されていて、私じゃ思いつきもしなかった物語の先まで考えてくれて……きっと、クラスメイトと話しただけではこうはいかない。
「同じものを読んで貰えたの、嬉しいな。今日は学校でも少し本の話をしたんだけど、こんな風にはならなかったから」
本を読めば自分の世界が広がっていく。詰まらない毎日が少しだけ形を変えていく。それだけしか自分の世界の変え方を知らなかったけれど、人と話す事で自分だけでは辿り着けない答えを知る事が出来るのだと今、教えて貰った。
それは身近に居る人物では無く、この子なのだ。
私の世界に現れた、目の前のこの男の子。
「あのさ、聞きたい事があるの」
「うん」
「今ここは君の夢なんだよね? 本を読んで、それが反映されて」
「うん」
「君はもしかして、本当に居る人なの?」