聞いて貰えてあまりに嬉しかったからつい……まさかここまでベラベラ話してしまうとは。丁度本のお友達が欲しい気持ちがあったばかりに、これはだいぶ迷惑な話……。
「全然。真剣に話す玉木さん面白かったよ」
「……はい……」
「本の世界は、玉木さんにとっての夢の世界なんだね」
「……え? ……あ、そ、そんな感じかな」
にっこり笑う中川君は、特に他意は無い様に見えた。夢の世界だなんて言い回しは良くあるものだ、そう、良くあるもの。単なる一致で、私の気にし過ぎに決まっている。
「……中川君は、本を読むの?」
「あー……実はあんまり読まないんだ、申し訳ない」
その答えが返ってきた事に、なんだかホッと安堵する私がいた。やっぱり、私の勘違いだった。
だって、そもそもあの子は小さな男の子。大らかで頼りになる中川君とは正反対な性格だし、会話の流れとしても何も可笑しな点は無かった。ちょっとした事にひっかかって可笑しなのは私の方なのだ。
彼は今頃、どこで何をしているのだろう。
——その夜、私は夢の中に居た。そこは満天の星空の下、本の中のあの夜と全く同じ景色だった。