「玉木さんっていつもこんなに早いの?」
「あ、うん。本を読んでて……」
「本当に本が好きだね」
「……うん、大好きなの」
本の話をしてくれている。どんな所が大好きか、話しても良いかな。どんな話が好きで、どの作者が好きか、言ってもいいかな。
ふふっと、小さな笑う気配にハッとすると、中川君が微笑んでいた。
「なんでそんなに好きなの?」
「! えっと、沢山、色んな事が経験が出来るから!」
「経験?」
「うん! あっ、いや、経験をした気持ちになれるというか……私には体験出来ない出来事が起こる中で、どんな気持ちになるのかを主人公を通して感じて、もし私だったらとか想像してみたり、びっくりさせられる事にショックを受けるのも好き。決まりきったものより驚かされる展開とか、気持ちを上下させられる事が好きで、読み終わって余韻が残るものが好き。心に残って、その世界に浸るの。その世界が私の世界になって、私の中に素敵なものがどんどん増えていく……、!」
「?」
「ご、ごめん、話し過ぎた……気付けてよかった……」