——その晩、私は水族館に居た。勿論夢の中での事だ。

大きな水槽の前に佇む。小魚達が群れを作って渦を巻き、キラキラと光を散らばらせている。悠々と泳ぐエイの口はどこか無防備で、サメと同居している不思議が際立った。あのサメはなんで魚を食べないの?と、幼い頃に疑問に思った事をふと思い出す。水槽のサメはエサを貰うからわざわざ小魚を追って食べないのだと、今はもう知っている。

照明はわざと暗くなっていて、水槽の光がぼんやりと私を照らした。一人ぽつんと私だけが居る。

水族館には小さな時に行った記憶があるけれど、最近は久しく行っていない。テレビでよく観るジンベイザメが泳いでいるのは確か沖縄だった。先生が言っていた海が近い水族館はどこだろう。


「あれ?」


よく見ると、水槽の中に先程までは無かったはずの何かが浮いている。小さなものだったから側まで寄って目を凝らしてみると、そこに可笑しな物が泳いでいる事に気がついた。


「やっぱり! 消しゴムだ!」