「……この間してくれた時、時間がゆっくりになったんだ」
「……?」
「頭の中のうるさいのが段々やんで、答えが一つにまとまっていくみたいな……」
腕の中から顔を上げた男の子は、私をじっと見つめている。そこにあったのは、先程までの真っ白に血の気の引いた感情の薄い顔では無く、健康的に頬をほんのり赤らめて目をキラキラと輝かせる子供の顔だった。
「まるで魔法みたい」
はしゃぐ気持ちを隠し切れない様子で言う彼は年相応の顔をしていて、気持ちが移るように私もとっても嬉しくなった。良かった、彼には笑顔が一番似合っている。
「魔法じゃないからいつでもしてあげるよ」
「いつでも? また会ってくれる?」
「うん。また次の夢で」
「……うん。また、次の夢で」
パッと画面が切り替わるように現実へと戻った。窓の外には朝が来ていて、時計を見るといつも通りの起床時間だった。
男の子とのハグの効果かな。私の身体も何だか軽い。最後に約束だよと少し照れ臭そうに言う男の子が可愛くて、あんなに不安だったのに、今はもう繋がる夢への不安はすっかり無くなっていた。