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小高い丘の上で芝生に腰を下ろした。頭上に広がるのは満天の星空。遮る物は何も無く、まるで夜空に包み込まれているみたい。時折流れ星が走るのを見つめながら、輝く満月に照らされている。
溜め息が出るほど美しいこの景色はもしかして、魔法使いが魔法に目覚めた場所?
ここは夢の中。寝る前に読み終えた本の内容がそのまま夢に反映されたみたいだ。印象に残った場面だったから、実際に体験出来たみたいで嬉しい。こんなに綺麗な景色、現実で見る事は叶わないだろうから。
あれ? じゃあもしかして、今の私は魔法が使える……?
それならば試すしかないと、本の中で必要だった魔法の杖を探してみた。都合良くここら辺に落ちてたりしない? 辺りを見てみるが、特に何も無い。じゃあポケット? ……にも無いか。てことはもしかして、杖が無くても魔法が使えたりして。
「えいっ」
何となく人差し指を振ってみた。が、何も起こらない。魔法が使えない魔法使いの話だったから、同じように私も魔法が使えないのかなぁ。でもこの場所はようやく魔法が成功した場面だったけど……。
「えいっ」
……やっぱり駄目だ。あれかな、イメージが足りない? そりゃあそうか。とりあえず振った所で何も起きないよね、結果を想像しないと。えっと、本の中ではあの時何の魔法が出来たんだっけ……あっ、
「そうだ。消失の魔法だ」