「……もういいよ。もう、ダメだよ」
だから、その力の入った拳の上に、私はそっと手を置いた。固まった心を解してあげたかったから。
「そんな事ばかり言っちゃダメだよ。自分をそんなに責めないで」
「……」
「私、その気持ち分かるよ。……すごく分かる」
信じた人に裏切られる気持ち。それがとても怖くて、辛い気持ち。傷付かない様、逃げ出す気持ち。
「でも、こうやって心を見せ合う事で、また信じ合う事が出来るなら、きっともう大丈夫。信じられる。少なくとも、私達の間では」
「……」
同じ気持ちが理解出来たら、もう大丈夫だと確信出来た。信じられる。信じ合えるのだと言い切れる。同じ悲しみを知る私とあなたなら。
中川君は私の手を握り返すと、泣きそうな顔で私を見て、笑った。
「……立ち向かう勇気がなくてごめん。君を傷つけて、ごめん。俺を許して」
「私も。嘘だって逃げて、ごめんね」
これで仲直りだねと、手を取り微笑み合う私達。これで全てが丸く収まって、ハッピーエンドにも似た余韻が私達を包み込んだ。
——が、そこに突然、ガラリと開かれた教室の扉。