こんなに小さな男の子が告げる、死にたいという言葉の衝撃がとても大きくて、どう考えても似つかわしく無いその言葉が私の胸を深く抉る。どうにかしたい、しなければと焦る。

 この子は知らない子だ。もしかしたらお化けかもしれないし、そもそも夢の中の存在である。だけど消えてしまった猫さんの他にこの子まで失う訳にはいかないと、自然と心がこの子に寄り添っていった。なぜならきっとこの子はこの夢の中で出会えた、私と猫さんの大切な男の子だろうと理由もなく感じたから。
 きっとこの子に会う為に猫さんは私をここに連れて来てくれたんだ。


「死なないで欲しい。猫さんが居なくなって寂しいなら、私が側に居るよ」

「そういう事じゃない」

「そういう事じゃないなら、どういう事か教えて欲しい」

「どういう事かも分からない」

「じゃあ一緒に考えよう」


 腕の中の男の子が、小さ身動いだのが分かった。

 失いたくない。守ってあげたい。だってきっと、この子も私の物語の、大事な相棒なのだから。


「一緒に考えよう。君がなんで死にたくなったのか分からない。でも死にたいくらい辛い気持ちなら私にもなんとなく分かる。一緒に探そう。一緒に前を向こう。そうしたらまた猫さんも帰ってくるかもしれない」

「…………」

「一人じゃないよ、私が居る。私にも、君が居る。こんな場所でたった二人きりなんだから私の為にも生きて欲しい。死んじゃう前に二人で色々探していこうよ」

「…………」