私にだって自分の意思がある。私にだって好きに生きる権利がある。私にだって、私だけの大切な今がある。想いがある。世界がある。
「私は……私は、何でも言う事をきく、良い子なんかじゃない……!」
——その時。
「!」
ギュッと包まれる温もりにハッとすると、私は中川君の腕の中に居た。強く、強く抱きしめられている。
「やめて! 離して!」
「嫌だ。ごめんね、玉木さん。ごめん」
「信じられなくてごめん」そう、静かな声で彼は告げた。離れようともがいても、その腕は私を逃さない。
「俺は玉木さんを信じてる。本当だよ」
「嘘だ、中川君は私を信じてない。だから私の言葉はいつも届かないし、私を突き放したんでしょう? 夢に入れるなら誰でも良かったならもう放っておいて欲しい」
「違うんだよ。初めから玉木さんだって分かってて、玉木さんだから俺は夢に入ったんだよ。玉木さんじゃないと嫌だから、君との思い出を辿ってここまで来たんだ」
「嘘だ……そんなの、嘘だよ」