きっと、たまたま中川君の夢に入れたのが私だった事。それが間違いだったのだ。私じゃないもっと別のちゃんとした人が入れていたら、こんな結末を迎える事は無かったはずだ。だって現実の私は人と上手く関われないし、鈍臭くて勉強しか出来ないし、それでも平気な顔をして自分の席に座っていられる様な人間だ。

中川君と私が釣り合う訳がない。でも中川君は一時でも私の事を受け入れてくれた。それはきっと、夢の中だったからだ。夢の中の、二人きりだったから。

そうか、だから中川君は私と現実で会いたくなかったんだ。現実で私と関わりがある所なんて誰にも知られたく無かったんだ、きっとそうに決まってる。だって始めから中川君は私だと知っていて黙っていたのだから。頑なに現実で会う事にこだわる私を受け入れてくれない訳だった。

夢の中だから私達は出会えた。そうだとすると、私が何故中川君の夢の中に入れたのか。私達がお互いの夢を何故行き来出来たのか。その理由がなんだか分かった気がする。それはきっと、私達の共通点。夢の中に自分の世界を作っていた所が同じだったからではないだろうか。

私にとって夢の中は窮屈な毎日から逃げ出す場所で、中川君にとってのそこは、本当の自分でいられる場所。自分達の世界がそこにはあったから、私達は夢の中で、お互いの世界を通じて出会う事が出来たのではないだろうか。

……となると、それは裏を返せば、夢が繋がらなかったら私達が出会う事は決して無かったという事。今の私達の関係は夢の中での事。夢の中の私達にしか、その資格は無いという事。

だったら……もう、これで良い。私はもう全て忘れて、中川君は別の夢が繋がる相手を探す。これが私達二人にとっての正解だ。これが、ひとりぼっちの私達の答えだったのだ。