——真剣に考えられる私は正しいと、私を受け入れてくれた君の声がする。

——でもそんな事よりも大事な物があるのだと、その為に全力を尽くしていた君を知る。

——だから私では駄目だったのだと、今、目の前で私を突き放す君に出会う。


私は、中川君という一人の人間を知り、彼の事を心から信じた。頼りにしてもらえた事、心を見せてもらえた事で、初めて自分に別の価値を与えてもらえた気がした。人に必要とされる事の意味を知り、大切に思い合う相手がいる幸せを与えてもらった。だから私も中川君に同じ気持ちを返していきたいと、思っていた、のに。

……そんな相手に否定される事。それは今までの何より辛い事だと知った。信じて全てを受け入れた相手に、私は受け入れてもらえなかった。猫さんは忠告してくれていたにも関わらず、そうならないと、私なら何とかなると自惚れていた。だから今、私は一人、暗闇の中。

下へ、下へと落ちていく——思い出せと、以前の私が耳元で囁く。私の現実を。私の毎日を。私は大人に褒められる為の事以外に何をしてきた? ずっと大人が敷いたレールの上をただ歩いてきただけで、一歩もはみ出す事はなかった。それを受け入れて、自分で考える事を放棄してきた。そんな私が今、彼に何をしてあげられる? 

言われた通りにする事しか出来ない私なのだから、彼の思いを受け入れ、大人しくあの場に留まる事がきっと正しかったのだ。それを、自分の考えで勝手に動いて、今の私なら出来ると自惚れて、彼の望みを叶えてあげる事が出来なかった。

そう。全部ぜんぶ、言葉に従わなかった私が悪い。大人の言う事を聞く様に、彼の言う通りにしていればこんな事にはならなかった。もしかしたら、中川君が信じてくれたのは言う事を聞く、間違えない私だったのかもしれない。それがこんな事になったから拒絶されたのだ。私はただ、言われた通りに求められる事をしていればそれで良かったはずなのに。