もう何も見えないし、何も聞こえない。そんな自分になりたかった。消えてしまいたかった。誰にどう思われても平気な強さを持っている訳じゃない。私は知らなかっただけだ。信じた相手に否定される辛さを知らなかっただけ。同じだけ信じ合っているのだと思っていた。私たちは特別な二人なのだと。それはただの私の勘違いだった。

誰でも良かったのだ。結局、彼の夢の中に入れるのなら誰でもよくて、それがたまたま私だった。ただ、それだけの事。それを私は、初めて人と心を通わせたと勘違いして、浮かれて、間違えてしまった。

人に拒絶される事がこんなに辛いと思わなかった。それすらも知らなかったのだ。そんな私が、彼を助けられるはずがない。


「……ごめんなさい、ここに来たのが私で」


ごめんなさい。あなたの期待に応えられない私で。


「もう……駄目だ」


消えたいと、心の底から思った。この気持ちも今やっと理解出来た。この世界から居なくなってしまいたい気持ち。ようやくあなたの気持ちが理解出来たから、少しは許してくれるかな。

大きな影が、私の目の前に立っていた。それは彼の背後にいた、あの黒い影。それが今、私の形をして、私を上から覗き込んでいる。大きな、大きな黒い影。それが段々私にのしかかる様に覆い被さって——私は、闇に飲み込まれた。