……確かに。それは私が最近読んだ本の一つで間違い無い。『夢の成り立ち』。彼との繋がる夢に興味を持って調べる為に読んだ本だ。けれど、ちょうど読んでいる時に人と話す機会があって、やっぱり私達の間にだけ起こった特別な出来事だからと、こんな所に書いてある訳が無いのだと確信して読むのをやめてしまったのだ。だから魔法使いの本程の思い入れがあるかと言われるとそうでも無いし、この本の表紙が読めるようになっていた理由がよく分からない。

とはいえ何かあるのかもと、パラパラとページを捲ってみる。すると、あれ?と、可笑しな点に気が付いた。なので一番最後のページを確認してみると……やっぱりだ。この本にはちゃんと最後まで内容が書いてある。私は読み切っていないのでどんな内容なのか知らないはずなのに、そこには私の知らない情報がきちんと存在していた。

ここは私の図書館だ。きっと海と同じ様に、本を読むのが好きな私の為に、彼がこの場所を用意してくれたのだと思う。彼が作った、図書館という名の私の持つ知識や経験が集まる場所。

だから、本を開くまでどんな内容の本なのか分からないのだろう。だって、彼は私が今までどんな本を読んできたのかを知らないはずだから、図書館を用意するにあたって、事前に本を全て揃えておく事は出来ないはずだ。だから一つひとつ、私が手に取り開く必要があるのだろうと思うと、納得がいく。

……となると、魔法使いの本が何故開く前から読めたのか……それが分かった気がする。彼は知っていたのだ。夢の中で私の話を聞いて、実際に同じ本を読んでくれたから、私が読んだ本の一つとしてこの本は私の図書館にあるはずだと、事前に用意する事が出来たのだ。……じゃあ、こっちの本は?