この図書館もまた、私の為に用意された場所だと聞いていた。だからここに彼の手掛かりは無いだろうと後回しにしていたのだ。どの本を選んでも私の知っている物しか存在しないのだから、この場所で新たに何かを得る事はないのだろうと。
しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。可能性があるのならとにかく進まなければならないと、目の前の本棚と向き合う様に立つ。変わらず背表紙の文字ははっきりと読めないけれど、お構いなしに片っ端から取り出してはパラパラとめくり、中身を確認して閉じていった。何度もなんども、小さな違いでも何かの変化でも、なんでも良いから生まれて欲しいと願っていた。
けれど、ここは私の図書館。そこにあるのは私がひとりぼっちで読み上げてきた本の数々。私しか知らない私の思い出がそこにはあったけれど、何度も繰り返す内に、そのどれもが私がひとりぼっちである証明の様な気がしてならなかった。誰に繋がる情報も無い。だってここは、私の図書館なのだから……。
——と、諦めかけたその時。少し先にある一冊の本が目に入り、ふと、初めてここに訪れた時の事が頭を過ぎる。そういえば魔法使いのお話の本だけが、本を読む前から背表紙にある題名を読む事が出来たのだ。これも同じ様にはっきりと形を持った何かが書かれている様に見えた。
階段を上がってその本の前に立つと、やはり読み取る事が出来る文字でしっかりと表記されている。それは魔法使いの物とは違う本の題名だった。
「夢の、成り立ち……」