雨は止んだ。雲の切れ間に、空が顔を出す。段々と広がる夜空には綺麗な星が瞬いていて、月明かりが差し込み海の輝きを照らし出す。穏やかな波の音が響く、神秘的な海の夜景。額に飾られた絵画の様に間違いの無い景色だったけれど、私はその景色の美しさを受け入れる事は出来なかった。

ただただ、その美しさに焦る。悠長にしていられないと思った。早く二人で外へ出ないと。早くそんな事はないのだと証明しないと。この景色は彼が答えを受け入れてしまった結果だ。きっと私が間違った方へ彼を導いてしまったのだ。

彼が満足するまでずっとここで寄り添ってあげる事も出来るけれど、きっとそれは間違っている。それでは彼をここから出してあげる事が出来ない。……そう。きっと外へ出られないのは私じゃない。ずっとここに居た彼だったのだ。それが、ひとりぼっちの答えだった。

悲しくなって、じっと佇む彼をギュッと抱きしめた。あの時の小さな彼にしてあげた様に、少しでも心が軽く、柔らかくなります様にと。私が出来る事をしなければと思った。今の所、私は何も出来ていない。彼を助ける事も、応えてあげる事も出来ていない。

早く見つけないと。それが私に出来る事。それが、私が彼の為に出来る事。

待っててと告げると、私は走り出した。一つ、明日向かおうと思っていた場所がある。街は探し尽くしてしまったし、他にもし探し切れていない場所があるとしたらここだと思っていたのだ。この場所にきっと何かあるだろうと予感がして、私は全速力で走る。少しでも早く、早く君を見つけないと!

ついた!と、肩で息をしながら扉を開けた。壁面にぎっしりと詰まった本に、天井まで続く螺旋階段。そこは始めに案内されて以来、一度も訪れていない場所。図書館だった。