じっと彼は、私を見つめる。その瞳は寂しげで、頑なに自分を受け入れられない、冷え切った瞳をしていた。


「全部、君の言う通り。ライオンも犬も猫も、君の出会った子供の俺と同じ。全部が俺で間違いない。でも、これで俺は君に全てを見せたけど、俺が誰だか君に分かる?」

「……」

「……分からないよね。君は知ってるけど、分からないんだよ」


そして、「おやすみ」と彼が言うと、空は瞬く間に夜を連れてきて、私はまたあの家へと戻っていた。大人しくベッドに潜って、考える。先程の彼の言葉を何度も反復する。


『——君は知ってるけど、分からないんだよ』


責められている様にも、諦められてる様にも感じた。期待されている様にも、恐れられている様にも。

今の私は君の内面を知った。でも、君が誰だかまだ分からない。分からないから、君はそんな事を言ったんだよね? つまり私は分かるはずなんだよね? 私は君を知ってるんだよね?

彼の寂しげな瞳だけが、目を閉じても浮かび上がって消えなかった。私が君を笑顔にしたい。私に出来る事ならなんでもしてあげたい。私を求めてくれるのなら。