空は一日曇ったまま。それでもだんだん暗くなっていた辺りに夕方くらいかなと予想がついた。そろそろ帰ろうかな、あのお家に。
と、その前に。昨日案内してもらった海へ寄って帰ろうとピンときた。私の為にあの子が用意してくれた大切な場所だったから、落ち込んだ心を慰めてもらおうと思ったのだ。昨日の消しゴム達はまだ元気にしているのだろうか。
門からスタートして図書館の前を通り過ぎ、昨日の案内通りに海へと向かう。すると堤防の前に佇む人の影が一つ。
「ライオンさん!」
三角の耳にスッと伸びた尻尾。間違いなく本人である。駆け寄り隣に立つ私を見下ろす彼は、目が合うとまたあの時の様ににこりと微笑んで、「どうだった? 街探検は」と尋ねてくれた。良かった。部屋を出て行ってしまったけれど、やっぱり拒絶された訳では無かったらしい。
「えっと、すごくくたびれた。だいぶ歩いたもので……」
「一日中歩いてたもんね」
「う、うん……」
……でも、なんだろう。何か変だ。私の事をなんでも知ってるのはいつもの事としても、ライオンさんってこんな雰囲気だったっけ。
「あ、そうだ。私すっかりこの街にはお城があるものだとばかり思ってたけど、違ったんだね。ライオンさんはお城に住んでると決めつけてたよ」
「なんでそう思ったの?」
「んー、やっぱりライオンは百獣の王だし、お城が似合う素敵な街並みでもあるし、ファンタジー感に引っ張られたのかも……」
「うん。でも間違って無いよ。昔はあったんだ」