「次はどこに行くの?」
先を行くライオンさんの背中に尋ねると、「海」とだけ返ってきた。
「海? え、海があるの?」
「ある。行くだろ?」
ちらりと首だけで振り返ったライオンさんは、まるで私が海に行きたがっているのを知っているかの様に、断られるつもりは無いといった堂々とした様子である。いや、私の事もあれこれ知っている様なのだから、海へ行きたがっていた事も当然ご存知なのだろう。
お願いしますと頭を下げると、満足気にふんっと鼻で笑い、そんな所にいないでこっちへ来いと顎で隣を示すので、小走りで彼の隣に並んだ。海に着くまでの間、頼んだ訳でも無いのに彼は少し歩く速さを落としてくれた。きっと私が隣を歩きやすいように合わせてくれたのだと思うけど、なんだか不器用な人だなとこっそり笑ってしまった。優しさとぶっきらぼうが同居している彼が可愛かった。
可愛いといったら犬くん。犬くんもとても優しかった。甘えん坊で優しい彼。猫さんも優しい。少し意地悪だけどすごく優しい心で接してくれる。あの子だって……あの子が優しいから、きっとこの世界の住人はみんな優しい。それがあの子の夢の中で、あの子の心の中。あの子そのもの……あれ?
「着いたぞ」
掛けられた声にハッと我に返り前を見ると、目の前にはキラキラと輝く大きな海が広がっていた。いつの間にか辿り着いた街外れの、堤防の前で眺める青い海と潮の香り——ここは、この景色は。