「読みたいのはあったのか?」

「!」


急に掛けられた声に驚いて振り返ると、すぐ後ろにライオンさんが立っていてぎょっとしてしまった。いつの間に階段を上がってきたのだろう……集中していて全然気が付かなかった。

ライオンさんはそのまま私の手元の本を覗き込むと、呆れた様にふっと笑う。なんだろう、今までとは違い、どこか柔らかな雰囲気だった。


「それ、好きだよな」

「あ、うん。好きだし、あの子にも読んで貰ったんだよ」

「知ってる。折角なら別のやつにすればいいのに」


なるほど。知ってたからそんな反応だったのか。どうやらこの本についても、あの子についても知っているらしいライオンさんは、犬くんと猫さんに続いて、やっぱり夢の中の住人なのだと実感した。彼らにとっては当たり前の事なのだろうか。私の事もなんでもバレてる気がして少し恥ずかしい。


「でもね、他のを選ぼうとしても開く本が全部読んだ事あるのばっかりなんだよ。こんなに沢山あるのにおかしいよね?」

「それはそうだろ。ここはおまえの図書館だし」

「……え? なんて?」

「だから、おまえの図書館なんだから当たり前だろって」

「私の……図書館?」