私はよく夢を見る。あ、これは夢だ、と気づいた瞬間がスタートで、そこから大冒険が始まるのだ。独りぼっちの時もあれば、相棒とも呼べる相手が居る事も。
「にゃあ」
人が行き交う街並みのど真ん中に立っている私の足元に、綺麗に背筋を伸ばして座っている黒猫がいた。前足をぺろりと舐めると、金の瞳をキラリと光らせてこちらを見やる。
目が合った瞬間、昔に映画で見た猫についていく物語を思い出した。これが今回の夢の舞台で、今日の相棒はこの黒猫さんで決まりみたいだ。猫と冒険だなんて、今回の夢もとっても楽しみ。
「どこへ行く? どこでもいいよ。連れて行って」
うきうきして猫に声を掛けると、リン、と鈴の音を鳴らして黒猫は歩き出す。やっぱりこの猫さんは私の言葉が分かるのだ。テンションは爆上がりである。
早速着いて行くと、猫が歩くのに合わせて、リンリンと鈴の可愛い音が鳴って、そういえばこの子、首輪がついているんだなぁと気になった。
「君は誰かのお家の猫なの?」
「……」
私の問いに立ち止まった猫は振り向くと、ジッと私を見つめてくる。その猫の醸し出す雰囲気がなんだか、不服そうというか、嫌がっている感じ……。
「……あ、猫だもん、自由が好きなのかな。首輪は嫌?」
「……」
無言である。答えたくないという事か、それともお話しの出来ない猫さんなのか。猫とお話し出来たら楽しそうだけど、怒らせてしまって置いていかれても詰まらない。
「変な事聞いてごめんね。どうぞ行って下さい」