どうすればいいのか分からない。お昼休み、舞子は困り果てていた。
「誰か、これを花梨に渡してくれ!」
少し前、隣の男子校のフェンスの向こう側から輝が大声を出していたのだ。
グランド沿いでダンスサークルの活動をしていた女子大生達は騒然となった。一人の女子が、輝の顔を見てぽーっと頬を赤らめながら手紙を預かると、花梨の友達の舞子ところに運んできたのだ。
けれども、花梨はそれを開けようともしなかった。舞子は泣きそうな顔になっている。
「ねぇ、花梨、早く読みなよ!」
渡してくれた子の話によると、輝は今にも泣きそうな顔をしていたという。それを聞いた舞子は、輝の真剣な眼差しを思い浮かべて心を痛めている。
「ねぇ、どうして輝くんのことを無視するのよ? 花梨、どうしちゃったのよ! 二人の間に何があったのよ」
思わず責めるような口調になっている。
「あんた達、お互いに何か不満があるなら本人に言えばいいじゃない! 輝くんは、あんたと話をしようと、あんなに必死になっているのに、なんで意地を張るのよ!」
「……お兄ちゃんが言ったの。あたしに本当のことを教えてくれたの」
最初は信じられなかった。でも、話を聞いた瞬間、世界が壊れたようなショックを受けた。
「輝くんは、マリアさんとキスしていたの……」
「まさか……」
舞子が真っ青になる。
「嘘だぁ! 浮気! うそ、うそーーーーーーっ!」
嘘なら、どんなにいいだろう。それを聞いた瞬間、見えない点と点が繋がり、悲劇の星座が浮かんだような気がした。悲劇の連鎖の真ん中にいるもう一人の女。それはマリアなのだ!
輝が浮気性な男だと思はない。花梨が恐れているのは、そんなことなんかじゃない。
悲劇の駒がピタリと揃ってしまった。怖くてたまらない。彼女はアランスの生まれ代わりに違いない。あの時、ギバは言った。悲劇は繰り返す。それを止めなければならない。止める方法はただひとつ。
『あたしが輝くんを愛さなければいい!』
だって、すべての始まりはイーリスが不貞を働いたことから始まっているのだもの。
(なぜ、あんな夢を見るのか。ずっと不思議に思っていたけれど、今なら分かるわ……)
夢が警告している。同じことを繰り返すなと。
花梨は、ぎゅっと目を閉じて輝の手紙を握りしめると、それをゴミ箱に捨てた。
(……ごめんね、輝くん)
あなたが悪い訳じゃない。これは、あたしのせいなの。そのことを、彼にきちんと説明できたならどんなにいいだろう。
花梨は、ギバが言った言葉をずっと覚えている。
『いつだって、同じような顔合わせで、同じものに執着している』
テリを恨みつつ死んだライラ。今世でのライラの生まれ変わりが誰なのか、気になって仕方がなかった。これまでにも考え続けていた。
「誰か、これを花梨に渡してくれ!」
少し前、隣の男子校のフェンスの向こう側から輝が大声を出していたのだ。
グランド沿いでダンスサークルの活動をしていた女子大生達は騒然となった。一人の女子が、輝の顔を見てぽーっと頬を赤らめながら手紙を預かると、花梨の友達の舞子ところに運んできたのだ。
けれども、花梨はそれを開けようともしなかった。舞子は泣きそうな顔になっている。
「ねぇ、花梨、早く読みなよ!」
渡してくれた子の話によると、輝は今にも泣きそうな顔をしていたという。それを聞いた舞子は、輝の真剣な眼差しを思い浮かべて心を痛めている。
「ねぇ、どうして輝くんのことを無視するのよ? 花梨、どうしちゃったのよ! 二人の間に何があったのよ」
思わず責めるような口調になっている。
「あんた達、お互いに何か不満があるなら本人に言えばいいじゃない! 輝くんは、あんたと話をしようと、あんなに必死になっているのに、なんで意地を張るのよ!」
「……お兄ちゃんが言ったの。あたしに本当のことを教えてくれたの」
最初は信じられなかった。でも、話を聞いた瞬間、世界が壊れたようなショックを受けた。
「輝くんは、マリアさんとキスしていたの……」
「まさか……」
舞子が真っ青になる。
「嘘だぁ! 浮気! うそ、うそーーーーーーっ!」
嘘なら、どんなにいいだろう。それを聞いた瞬間、見えない点と点が繋がり、悲劇の星座が浮かんだような気がした。悲劇の連鎖の真ん中にいるもう一人の女。それはマリアなのだ!
輝が浮気性な男だと思はない。花梨が恐れているのは、そんなことなんかじゃない。
悲劇の駒がピタリと揃ってしまった。怖くてたまらない。彼女はアランスの生まれ代わりに違いない。あの時、ギバは言った。悲劇は繰り返す。それを止めなければならない。止める方法はただひとつ。
『あたしが輝くんを愛さなければいい!』
だって、すべての始まりはイーリスが不貞を働いたことから始まっているのだもの。
(なぜ、あんな夢を見るのか。ずっと不思議に思っていたけれど、今なら分かるわ……)
夢が警告している。同じことを繰り返すなと。
花梨は、ぎゅっと目を閉じて輝の手紙を握りしめると、それをゴミ箱に捨てた。
(……ごめんね、輝くん)
あなたが悪い訳じゃない。これは、あたしのせいなの。そのことを、彼にきちんと説明できたならどんなにいいだろう。
花梨は、ギバが言った言葉をずっと覚えている。
『いつだって、同じような顔合わせで、同じものに執着している』
テリを恨みつつ死んだライラ。今世でのライラの生まれ変わりが誰なのか、気になって仕方がなかった。これまでにも考え続けていた。