切羽詰った顔で呟いているというのに、輝はポカンと口を開けている。なんだ、そんなことか……。そんなことを本気にするなんて……。輝は、花梨に向かって説得するように告げていく。
「占う人によって言うことは変わるんだぜ。うちの学校の女生徒がよく当たる占いがあるって言ってたぜ。そこで見てもらえば別の結果がでるかもしれないぜ」
輝は花梨の手を取った。そして、ゲームセンターへと向かったのだ。
「ここで占いをしようぜ。絶対に運勢が変わるってば」
機械に二人の生年月日を入力して行うのだ。これは人工知能によるタロット占いだ。古代ケルト十字法占いというものだった。
タロット占いには詳しくないけれども、エジプト的なカードの絵柄は神秘的だった。宇宙すべてを包括しているかのような世界観が広がっている。
シャカシャカ。
画像の中で、カードののシャッフルが始まっている。最初に聖杯の七が出た。他にも、月の絵や、吊られた男など出てくるが、素人の花梨には絵札の意味がまるで分からない。
「あっ……」
そして、最後に出たカード。それは死神だった。逆さまになった死神の無気味な姿を見た瞬間、花梨は、フラリと足元から崩れそうになる。ザーッと血の気が引いていく。
「やっぱり……」
花梨はゾクッと震える。死の鎌を容赦なく首筋に振り下ろされたかのように感じてショックを受けていた。
(やっぱり、死から逃げられなやしないんだわ!)
骸骨が大きな鎌を掲げる不気味な絵が花梨の心を切り刻む。しかし、脇にいる輝は呑気だった。
「うわー。なんだろな? なんのことか、絵だけを見てもさっぱり分かんないよな」
カードが出尽くした後、占いの結果を記した用紙が出てくるようなのだが、そんなものを読む気にはなれなかった。
死んでしまう……。また、殺してしまう……。
「ごめんなさい」
前世の出来事を何も知らない相手に説明することなど不可能だ。それに、輝に死の運命を知らせたくなかった。
「輝くん、とにかく駄目なの!」
「えっ、待てよ。結果の紙を見ないのかよ!」
「ごめん。あたしと一緒にいたら、きっと、よくないことが起こるの。あたしは死神なの」
ポロっと涙をこぼしている。ずっとこらえていた感情が真珠のようにこぼれ落ちていく。
「あたし、あなたがひどい目に合ったら嫌なの……」
長い睫の先端がしっとりと濡れている。輝はゾクリとなる。朝露に濡れる花のように可憐な風情を漂わせる花梨の口元が哀し気に震えている。
この瞬間、輝は衝動的に腕を引き寄せてキスしていた。唇を塞がれたまま花梨は動けなくなる。体の芯が痺れて花梨の息が止まった。背後でクレーンゲームをしていた中学生の男の子二人が呆然としている。
「輝くん、いきなり何なのよ!」
「占う人によって言うことは変わるんだぜ。うちの学校の女生徒がよく当たる占いがあるって言ってたぜ。そこで見てもらえば別の結果がでるかもしれないぜ」
輝は花梨の手を取った。そして、ゲームセンターへと向かったのだ。
「ここで占いをしようぜ。絶対に運勢が変わるってば」
機械に二人の生年月日を入力して行うのだ。これは人工知能によるタロット占いだ。古代ケルト十字法占いというものだった。
タロット占いには詳しくないけれども、エジプト的なカードの絵柄は神秘的だった。宇宙すべてを包括しているかのような世界観が広がっている。
シャカシャカ。
画像の中で、カードののシャッフルが始まっている。最初に聖杯の七が出た。他にも、月の絵や、吊られた男など出てくるが、素人の花梨には絵札の意味がまるで分からない。
「あっ……」
そして、最後に出たカード。それは死神だった。逆さまになった死神の無気味な姿を見た瞬間、花梨は、フラリと足元から崩れそうになる。ザーッと血の気が引いていく。
「やっぱり……」
花梨はゾクッと震える。死の鎌を容赦なく首筋に振り下ろされたかのように感じてショックを受けていた。
(やっぱり、死から逃げられなやしないんだわ!)
骸骨が大きな鎌を掲げる不気味な絵が花梨の心を切り刻む。しかし、脇にいる輝は呑気だった。
「うわー。なんだろな? なんのことか、絵だけを見てもさっぱり分かんないよな」
カードが出尽くした後、占いの結果を記した用紙が出てくるようなのだが、そんなものを読む気にはなれなかった。
死んでしまう……。また、殺してしまう……。
「ごめんなさい」
前世の出来事を何も知らない相手に説明することなど不可能だ。それに、輝に死の運命を知らせたくなかった。
「輝くん、とにかく駄目なの!」
「えっ、待てよ。結果の紙を見ないのかよ!」
「ごめん。あたしと一緒にいたら、きっと、よくないことが起こるの。あたしは死神なの」
ポロっと涙をこぼしている。ずっとこらえていた感情が真珠のようにこぼれ落ちていく。
「あたし、あなたがひどい目に合ったら嫌なの……」
長い睫の先端がしっとりと濡れている。輝はゾクリとなる。朝露に濡れる花のように可憐な風情を漂わせる花梨の口元が哀し気に震えている。
この瞬間、輝は衝動的に腕を引き寄せてキスしていた。唇を塞がれたまま花梨は動けなくなる。体の芯が痺れて花梨の息が止まった。背後でクレーンゲームをしていた中学生の男の子二人が呆然としている。
「輝くん、いきなり何なのよ!」