「えっ、なに? それ?」
ユウジは片方の眉を上げていた。本当に何も知らないように見える。
「殺すなら、君だろう。本当に邪魔なんだよなぁ。ほんとにさぁ、君って目障りなんだよね」
テーブルの前に立っていた花梨はピクンと後ずさった。そして、怯えたように目を逸らす。
「おい、こっちを見ろよ」
ユウジが花梨の顎先を上げるような高慢な顔つきで睨んでいる。一体、どういうつもりなのだろう。彼は、ここで何をどうしたいのだろう。
ジリジリとした空気に耐えられない。湿った悪意が漂っている。
先刻から、ユウジは花梨をバカにしたような顔で見下ろしている。花梨は顔を強張らせたまま力なくしゃがみ込んでいく。現実逃避するかのように目を閉じる花梨の目尻に涙が浮かぶ。
「ふっ……。冗談だよ。冗談に決まっているだろう!」
下から見上げると、ユウジの綺麗で女のように華奢な身体が見える。こんな時に、そんなことを思うのもなんだけど、みんなが言うように観賞用の綺麗な身体だった。
高級サロンで手入れしているのか体毛がなくてツルンとしている。この人がゲイ?
確かにそう見える。ユウジは長い腕を伸ばして花梨の髪の先端をつまんでいる。人を不安にさせる神経質な仕草だ。
「なぁ、どうして欲しい?」
花梨は、その言葉にビクッとして顔を上げていく。
(どうするつもりなの?)
相手が何を考えているのか分からないが、悪意だけがアメーバーのように不確かな形で絡み付いている。彼は、全裸のまま、ぴったりと抱きしめるように背中に手をまわしてから花梨の耳元で囁いた。顔の前にユウジの股間が迫っている。
「……もうすぐ、おまえは恋人を失うぜ」
何を言うの!
「おい、おまえ、そこで何をやっているんだ!」
その時、いきなり鋭い声が響いた。部屋の扉が開いたかと思うと、輝が飛び込んで来たのだ。これまで誰も見たことがないほどに鋭い顔つきだった。
「おまえ、彼女から離れろよ!」
叫びつつ、輝がユウジに馬乗りになる。ユウジが押し倒されていた。ボクサーのように輝の鋭い拳がめり込んでいる。止めようとしたけれど、遅かった。殴られた衝撃でユウジの顔が歪む。
「やめてーーー! 違う! やめてっ!」
誤解なの。ああ、駄目なのよ!
「あたし、何もされていないわ! その人、何も悪くないわ! 輝くん、いいから落ち着いて!」
普段は穏やかな人なのに、こういうふうに一気に野性味を出す瞬間がある。以前、電車の中で痴漢の手首を握っていた時の迫力も相当なものだった。背後から輝に抱きついて懇願していく。
「輝くん。駄目! もうやめてよ!」
ユウジは片方の眉を上げていた。本当に何も知らないように見える。
「殺すなら、君だろう。本当に邪魔なんだよなぁ。ほんとにさぁ、君って目障りなんだよね」
テーブルの前に立っていた花梨はピクンと後ずさった。そして、怯えたように目を逸らす。
「おい、こっちを見ろよ」
ユウジが花梨の顎先を上げるような高慢な顔つきで睨んでいる。一体、どういうつもりなのだろう。彼は、ここで何をどうしたいのだろう。
ジリジリとした空気に耐えられない。湿った悪意が漂っている。
先刻から、ユウジは花梨をバカにしたような顔で見下ろしている。花梨は顔を強張らせたまま力なくしゃがみ込んでいく。現実逃避するかのように目を閉じる花梨の目尻に涙が浮かぶ。
「ふっ……。冗談だよ。冗談に決まっているだろう!」
下から見上げると、ユウジの綺麗で女のように華奢な身体が見える。こんな時に、そんなことを思うのもなんだけど、みんなが言うように観賞用の綺麗な身体だった。
高級サロンで手入れしているのか体毛がなくてツルンとしている。この人がゲイ?
確かにそう見える。ユウジは長い腕を伸ばして花梨の髪の先端をつまんでいる。人を不安にさせる神経質な仕草だ。
「なぁ、どうして欲しい?」
花梨は、その言葉にビクッとして顔を上げていく。
(どうするつもりなの?)
相手が何を考えているのか分からないが、悪意だけがアメーバーのように不確かな形で絡み付いている。彼は、全裸のまま、ぴったりと抱きしめるように背中に手をまわしてから花梨の耳元で囁いた。顔の前にユウジの股間が迫っている。
「……もうすぐ、おまえは恋人を失うぜ」
何を言うの!
「おい、おまえ、そこで何をやっているんだ!」
その時、いきなり鋭い声が響いた。部屋の扉が開いたかと思うと、輝が飛び込んで来たのだ。これまで誰も見たことがないほどに鋭い顔つきだった。
「おまえ、彼女から離れろよ!」
叫びつつ、輝がユウジに馬乗りになる。ユウジが押し倒されていた。ボクサーのように輝の鋭い拳がめり込んでいる。止めようとしたけれど、遅かった。殴られた衝撃でユウジの顔が歪む。
「やめてーーー! 違う! やめてっ!」
誤解なの。ああ、駄目なのよ!
「あたし、何もされていないわ! その人、何も悪くないわ! 輝くん、いいから落ち着いて!」
普段は穏やかな人なのに、こういうふうに一気に野性味を出す瞬間がある。以前、電車の中で痴漢の手首を握っていた時の迫力も相当なものだった。背後から輝に抱きついて懇願していく。
「輝くん。駄目! もうやめてよ!」