ギバと出会ってからの数日間は塞ぎ込んでいた。朝、マグカップを握ったまま、ぼんやりしていると兄が花梨を心配して尋ねた。
「どうしたんだ? 体調でも悪いのか? 車で送っていこうか?」
「お兄ちゃんって心配性だよね。もうそろそろ、子供扱いするのは勘弁しでよ」
椅子から立ち上がろうとすると、兄がお洒落な中年女性向けの雑誌を差し出した。
「なぁ、この雑誌にもおまえらの写真が載っているぞ。どういう関係なんだ? 本当は付き合っているんじゃないのか」
展示されたものとは違う写真だった。指輪を嵌めて微笑み合う瞬間も撮られていたのだ。
「べ、別に、あたし達は付き合ったりしていないよ!」
キッパリと否定したというのに気難しい顔を深めている。
「お兄ちゃん、なんで、そんな怖い顔をしているの? 輝くんのことが嫌いなの?」
「こいつのことは何も知らないから聞いているんだよ。真面目な奴なのか? おまえの大学の隣にある工業高校の生徒だよな? あんまり頭は良くないようだな」
「そんな言い方は失礼だよ! 輝くんには宇宙工学をやりたいって夢があるんだよ。ちゃんと勉強しているよ!」
「おい、何を怒っているんだよ? 偏差値が低いというのは一般論だよ。実際、そうなんだろう? 何だか、最近のおまえの様子は変だぞ。おまえは世間知らずだ。それに、おまえは独り言を呟いたり、ボーッとしていることに母さんも俺も気付いているんだぞ」
「ごめんなさい……」
ギバの言葉を聞いたせいで神経質になってしまっている。些細な言葉にも身構えてしまう。
元々、少し内気なところがあるので家族は過保護になるようだ。
「あたし、学校に行くね」
兄は、そんな花梨の後姿を横目で見つめながら何かを考えているようだった。
☆
花梨と輝の写真はカメラ関係の雑誌に掲載された。こんなものを見ないと思っていた。しかし、舞子は、花梨を見るや否や甲高い声で尋ねてきた。学生食堂のざわめきの中でも舞子の声はよく響く。
「ねぇ、花梨! これってどういうことなのよ! どうして、あんたが輝くんと一緒に写っているのよ!」
舞子がプーッと頬を膨らませている。
「ひっどぉーい! なんで黙ってたの!」
「あたし、たまたま写真のモデルになっただけなの……。あたしも、こういうのに載るなんて聞いてないの」
花梨にはよく分からないがチェンの写真は加工の技術を駆使しているようである。
幻想的に見えるのはそのせいなのだ。
雑誌にはそのテクニックが詳細に記されている。
アタフタと説明するものの、うまい言い訳が見つからなかった。舞子は思い出したように、顎を上げて叫んだ。
「どうしたんだ? 体調でも悪いのか? 車で送っていこうか?」
「お兄ちゃんって心配性だよね。もうそろそろ、子供扱いするのは勘弁しでよ」
椅子から立ち上がろうとすると、兄がお洒落な中年女性向けの雑誌を差し出した。
「なぁ、この雑誌にもおまえらの写真が載っているぞ。どういう関係なんだ? 本当は付き合っているんじゃないのか」
展示されたものとは違う写真だった。指輪を嵌めて微笑み合う瞬間も撮られていたのだ。
「べ、別に、あたし達は付き合ったりしていないよ!」
キッパリと否定したというのに気難しい顔を深めている。
「お兄ちゃん、なんで、そんな怖い顔をしているの? 輝くんのことが嫌いなの?」
「こいつのことは何も知らないから聞いているんだよ。真面目な奴なのか? おまえの大学の隣にある工業高校の生徒だよな? あんまり頭は良くないようだな」
「そんな言い方は失礼だよ! 輝くんには宇宙工学をやりたいって夢があるんだよ。ちゃんと勉強しているよ!」
「おい、何を怒っているんだよ? 偏差値が低いというのは一般論だよ。実際、そうなんだろう? 何だか、最近のおまえの様子は変だぞ。おまえは世間知らずだ。それに、おまえは独り言を呟いたり、ボーッとしていることに母さんも俺も気付いているんだぞ」
「ごめんなさい……」
ギバの言葉を聞いたせいで神経質になってしまっている。些細な言葉にも身構えてしまう。
元々、少し内気なところがあるので家族は過保護になるようだ。
「あたし、学校に行くね」
兄は、そんな花梨の後姿を横目で見つめながら何かを考えているようだった。
☆
花梨と輝の写真はカメラ関係の雑誌に掲載された。こんなものを見ないと思っていた。しかし、舞子は、花梨を見るや否や甲高い声で尋ねてきた。学生食堂のざわめきの中でも舞子の声はよく響く。
「ねぇ、花梨! これってどういうことなのよ! どうして、あんたが輝くんと一緒に写っているのよ!」
舞子がプーッと頬を膨らませている。
「ひっどぉーい! なんで黙ってたの!」
「あたし、たまたま写真のモデルになっただけなの……。あたしも、こういうのに載るなんて聞いてないの」
花梨にはよく分からないがチェンの写真は加工の技術を駆使しているようである。
幻想的に見えるのはそのせいなのだ。
雑誌にはそのテクニックが詳細に記されている。
アタフタと説明するものの、うまい言い訳が見つからなかった。舞子は思い出したように、顎を上げて叫んだ。