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水曜の放課後。どうしても、またギバに会いたくなった花梨は、この街にやってきた。ここは占いの館の薄暗い一室。周囲は重たい黒のカーテンで仕切れられている。
「今日は、途中で逃げたりしませんから、過去について、もっと詳しく教えて欲しいんです。なぜ、あたしは生まれ変わるのですか?」
やはり、今日もギバは中東地域の古代の衣服を着ている。そんな彼女が厳かに呟いたのだ。
「何のために生まれ変わるのか。それは、おそらく自分の罪を償うためだろうね。イーリスはテリの他にもテリを慕う小姓を間接的に死なせてしまったんだよ…….」
「あっ……」
逢引を目撃しても少年は二人の関係など知らないと訴えた。
そして、アランスの配下の男に拷問されて亡くなる。イーリスが不倫しなければ起こらなかった悲劇である。何と罪深いことをしてしまったことか。
「ああ、そうさ。海賊を愛した時もそうだったよ。姫君と海賊は、マルスという少年を可愛がっていた。まだ、マルスは八歳のほんの子供だった」
「もしかして、その少年が殺された小姓の生まれ変わりですか? その時もマルスという男の子は死んだのですか?」
声が震えてしまう。怯える花梨の顔をじっと見返しながら呟いている。
「ああそうさ。可哀想だよ。あんたがエレノアだった時、あたしはマルスの祖母だった。地中海沿いの酒場で安い酒を売りながら、占い師のようなことをして生計を立てていた。あたしは、その頃は前世のことなんて知りもしなかったが、孫のマルが死ぬことだけは分かっていた。タロットカードが教えてくれた。悪魔のカードが出たんだよ」
ギバは大きく溜め息をついて言い継いでいる。
「神様ってやつは、いつの世も残酷なことをするもんさ」
「神様? それは何の神様なのですか?」
「さぁ、あたしにも分からないよ。強いて言うならば、運命っていう名の神が試練を課しているんだね」
キバも、すべてのことを把握している訳ではない。しかし、いつもイーリスが生まれ変わる場所にいて、その破滅の様子を見てきたのだ。
「俗に言うカルマってやつを何とかしなきゃ、どうにもならないんだよ」
因果は巡る。生まれ変わる度に魂が疲弊していく。
「いいかい。因果応報ってのは本当にあるんだよ」
運命の残酷さを見つめ続けてきたギバが溜め息を漏らした後、追い討ちをかけるように呟いた。
「魂が復讐せよと叫んでいるんだろうね。テリが海賊のアルブになった時には、ライラの生まれ変わりははプルートスという男だった。フルーストは、テリ、つまりアルブの海賊仲間になる。しかし、プルートスはエレノアを強姦しようとしたせいでアルブの手によって殺されている。ライラは、どの時代に生まれようともテリによって殺される運命なんだ」
水曜の放課後。どうしても、またギバに会いたくなった花梨は、この街にやってきた。ここは占いの館の薄暗い一室。周囲は重たい黒のカーテンで仕切れられている。
「今日は、途中で逃げたりしませんから、過去について、もっと詳しく教えて欲しいんです。なぜ、あたしは生まれ変わるのですか?」
やはり、今日もギバは中東地域の古代の衣服を着ている。そんな彼女が厳かに呟いたのだ。
「何のために生まれ変わるのか。それは、おそらく自分の罪を償うためだろうね。イーリスはテリの他にもテリを慕う小姓を間接的に死なせてしまったんだよ…….」
「あっ……」
逢引を目撃しても少年は二人の関係など知らないと訴えた。
そして、アランスの配下の男に拷問されて亡くなる。イーリスが不倫しなければ起こらなかった悲劇である。何と罪深いことをしてしまったことか。
「ああ、そうさ。海賊を愛した時もそうだったよ。姫君と海賊は、マルスという少年を可愛がっていた。まだ、マルスは八歳のほんの子供だった」
「もしかして、その少年が殺された小姓の生まれ変わりですか? その時もマルスという男の子は死んだのですか?」
声が震えてしまう。怯える花梨の顔をじっと見返しながら呟いている。
「ああそうさ。可哀想だよ。あんたがエレノアだった時、あたしはマルスの祖母だった。地中海沿いの酒場で安い酒を売りながら、占い師のようなことをして生計を立てていた。あたしは、その頃は前世のことなんて知りもしなかったが、孫のマルが死ぬことだけは分かっていた。タロットカードが教えてくれた。悪魔のカードが出たんだよ」
ギバは大きく溜め息をついて言い継いでいる。
「神様ってやつは、いつの世も残酷なことをするもんさ」
「神様? それは何の神様なのですか?」
「さぁ、あたしにも分からないよ。強いて言うならば、運命っていう名の神が試練を課しているんだね」
キバも、すべてのことを把握している訳ではない。しかし、いつもイーリスが生まれ変わる場所にいて、その破滅の様子を見てきたのだ。
「俗に言うカルマってやつを何とかしなきゃ、どうにもならないんだよ」
因果は巡る。生まれ変わる度に魂が疲弊していく。
「いいかい。因果応報ってのは本当にあるんだよ」
運命の残酷さを見つめ続けてきたギバが溜め息を漏らした後、追い討ちをかけるように呟いた。
「魂が復讐せよと叫んでいるんだろうね。テリが海賊のアルブになった時には、ライラの生まれ変わりははプルートスという男だった。フルーストは、テリ、つまりアルブの海賊仲間になる。しかし、プルートスはエレノアを強姦しようとしたせいでアルブの手によって殺されている。ライラは、どの時代に生まれようともテリによって殺される運命なんだ」