八つ当たりするようにして顔をしかめずにはいられなかった。

「仮に、あなたの輪廻転生が本当だとしたら、今度こそ、あなたは好きな相手と結ばれようって思わないの? 考えてもごらんなさいよ。今度こそ、やり直せるかもしれないじゃないのよ!」

 弟の言っている事は本当なのかもしれない。少なくとも、輝があの娘に惹かれていることは確定している。マリアにはそれが気に入らない。何だか、むしゃくしゃしてきた。

「生まれ変わりだとしたら、あの娘に会わせたら駄目よ。そんなことをしたら、彼は死んでしまう。わよ。そうさせない為にはどうすればいいのよ」

「分からない。もう、彼は彼女に惹かれているからね」

 マリアはグッと奥歯を噛み締めた。だが、あの娘は、輝の強い想いをまだ知らない。今なら間に合う。マリアはアクセルを踏み込む。獲物を狙う獣のような眼差しで、遠ざかる輝の姿をミラー超しに一瞥してから呟いた。

「名前も住所も知っているんでしょう。あなたは、あの娘と会うべきなのよ。付き合いなさい。そして、今度こそ、あなたと結ばれるのよ。応援するわ。いいから、あたしに任せなさい」

 こうするのは弟の為ではない。どうしても、自分のためにもそうしたいのだ。その夜、マリアは思考を巡らせていた。

『銀の城』の物語と、『海賊の船』の物語も、最後は同じ結末を迎えることになる。このままだと、テルは、あの娘を愛したせいで死ぬことになる。

 あの娘がいなければ……。あの娘が先に死ねばいい……。そうよ。あんな娘さえいなければ、テルはもっと生きられる。前世があろうとなかろうと、これだけはハッキリしている。

(絶対に輝をあの娘に渡さない。今度こそ阻止してみせるわ!)

 マリアは、本人にもよく分からない情念に突き動かされて決意したのだ。

 自分でも分からない情熱に突き動かされている。