伯母とケイは、どういう知り合いだなのだろう。花梨は、予想外の展開に対面のソファに座ったまま言葉を失った。ここぞとばかりに伯母が切々と呟いている。

「一度でいいから会ってくれないかしら。伯母さんの顔を立てると思って。お願いよ。一度でいいのよ」

 前のめりになっている。押しの強い声だった。昔から、花梨はこの人が苦手だ。

 子供の頃、こんなことがあった。

『花梨ちゃん、可愛いわね。ちょっと、これを着てみてくれないかしら』

 その翌月、花梨の姿はネットに晒されて唖然となった。モデルを雇うとお金がかるので花梨を利用して勝手に伯母のサイトに載せたのだ。花梨の両親は呆れていた。すぐに削除して欲しいと言ったのに応じなかった、そんな厚かましい伯母に対してピシャリと言い切る。

「お断りします」

「あらー、だけど、彼氏はいないんでしょう。この方、とても美しい顔をしているじゃないの? 家柄もいいのよ。この方、花梨とも前に会ったことがあるそうなのよ。どうしても、会いたいとおっしゃっているのよ」

 ドクッ。鼓動が撥ねる。なぜ、このタイミングなのだ。花梨がイーリスの記憶を思い出した途端に、ケイが会いたいと言ってきたことに驚きが隠せない。抗えないものが目前に迫っているような感覚になる。まだ二十歳なのに見合いなんて困る。前世の糸が自分に絡みついてくるかのようだ。

(だって、ケイは王の生まれ変わりなんだよ……)

 決して出会ってはいけない。それなのに、伯母はしつこく食い下がっている。

「お願いよ。伯母さんの顔を立ててよ、花梨ちゃん……」

 花梨の知らないところで何かが動き出している。人は、運命を避けようとして運命に豚当たる。あれは、誰の言葉だったのだろう。

 花梨は抗えないものを感じて呆然としていたのだった。