「あの、輝は大量に血を失っているそうです。輸血をしています……」

 隣にいるマリアが花梨に向かって呟いていく。

「花梨さん! あなたは輝のところに行くといいわ。あたしはケイのところに行く。輝を救うのよ! 死なないように祈るのよ!」

 エスカレーターの前で二人は互いに見詰め合っていた。

 マリアは瀕死の弟のもとへ。花梨は、瀕死の輝のもとへと歩き出していく。
 
(あたしは輝くんから離れない……)

 もう迷いはなかった。マリアもそうだ。それぞれ自分が向かうべき場所がどこなのかを知っている。