部屋に戻る前に嘉正くんたちに連れてこられたのは、厨房のような場所だった。


「────はい、巫寿のお膳。給食係の人帰っちゃったから、温め直しては貰えないんだけど」

「ううん……! 取っといてくれてありがとう」

「基本的には何時でも御飯は出してくれるけど、あまりにも遅くなると帰っちゃうから気をつけて」


そう言って漆塗りの4本足がついたお禅を受け取る。

ちょっと高い料亭とかで出てきそうなお禅だけど、メニューは至ってシンプルで一汁三菜が守られた健康的なものだった。

厨房と続く隣の座敷が、言わば食堂のようなものらしい。


朝昼晩とみんながここで一斉にご飯を食べるのだとか。


適当な場所に三人で腰を下ろす。



「それにしてもびっくりしたよ! 巫寿、報告祭の途中で急に倒れるんだもん! 禊祓詞で霊力尽きる人初めて見たよ!」

「こら、慶賀。言い方改めろ」



会話の流れで多分あまり良いことは言われていないのだろうと思ったけれど、いまいちよく分からなくて尋ねてみた。



「その霊力っていうのは……」

「運動するには体力が必要でしょ。言霊の力を操るために必要なのが霊力。目には見えないけれど、血液みたいに体の中を流れていて、使えば減るし、休めば戻る。体力と同じように、持ち合わせる量は人それぞれなんだよ」


霊力、と復唱してみる。

自分の手のひらをじっと見つめる。


手首には青い血管が浮んでいて、同じように霊力がながれているんだろうかと想像する。