「おっ、お迎え来てんじゃん。じゃあ俺はここまでね」


ぽんと私の頭に手を置いた薫先生はぐりぐりと撫で回す。

思わず首をちぢめて目を閉じた。



「あ、そうそう。さっきの質問だけど。この界隈の人達が苗字ではなくの名前で呼ぶ理由。二つあるよ」



ぱっと手が離れて、ぎゅっと瞑っていた目をゆっくり開ける。



「この界隈は一族の血の繋がりが広くて深いから、苗字が同じ奴が多いんだよね。ひとつはそういう理由」

「もうひとつは……?」

「もうひとつは────宿題にします! 自分なり考えてくるように」


え? と戸惑いの声をあげると、薫先生は「あはは、俺先生っぽいことしてる」と楽しげに笑いながら来た道を戻り始める。


「巫寿ー!」


慶賀くんに呼ばれて、しぶしぶ歩き出した。