建物の外に出ると石灯籠の灯りが鮮明になるほど夜は深まっていた。

街灯みたいな人工的なあかりはなく、知らない場所もあって妙に落ち着かない。


ソワソワしながら薫先生の後ろを歩く。



「禄輪のおっさんから手紙を受け取ってね。"一恍と泉寿の娘が見つかった。入学準備を進めてくれ"って。いやあ、長男の祝寿のことは何となく知ってたんだよ。中退して神職にはならなかった珍しいタイプだからさ」


頭の後ろで腕を組んで、呑気な声でそういった。

え? と首を傾げる。



「中退? それに禄輪さんは、お兄ちゃんも神職だって……」

「祝寿は初等部を卒業してからは、中等部は一般の学校へ行ったみたいだよ。だから、本庁からの仕事は受けてないから、フリーランスに近いのかな。本業は一般企業で働くサラリーマン。依頼があった時だけ、神職の仕事をこなす、みたいな」

「どうして……」

「それは、巫寿が今日になるまで、妖やこの世界のことを知らなかったことに起因すると思うけどね」


私が、妖やこの世界を知らなかったことが起因……?

よく分からなくて訪ねようとしたが、「今日はここまで。着いたよ」と先に制された。



薫先生が指さす方を見ると、自分の寮にいつの間にか戻ってきていた。


玄関口には嘉正くんや慶賀くんの姿があった。

きょろきょろと当たりを見回していたが、私を見つけると大きく手を振った。