「もしかして、神々廻先生ですか?」
「ピンポーン、大当たり。禄輪の愛弟子の、神々廻薫《ししべくゆる》先生です」
いぇい、とピースサインでウィンクを決めた神々廻先生に思わず苦笑いを浮かべる。
「薫先生でいいよ。この界隈はみんな下の名前で呼ぶから」
「あ、それ……凄く不思議だったんです。車でここに来た時、嘉正くんや慶賀くんも、下の名前で呼んでって」
「お、早速お友達が出来たんだねえ。宜しい宜しい」
なんだか会話のテンポが噛み合わず、苦笑いを浮べる。
「とりあえず寮に戻ろうか。立てる? 抱っこしようか?」
「だ、大丈夫ですっ」
差し出された手を慌ててとって立ち上がると、薫先生は「あはは」と楽しげに笑った。