「────……ん」


目を覚ましたその先には真っ白い天井があった。

ふかふかのベッドに眠っていた。


薄緑色のカーテンと消毒用のアルコールの匂い。

ここは、どこだろう。


「あ、起きた?」


そんな声とともに鼻先にバッと誰かの顔が現れて悲鳴を上げた。


「うわ、びっくりした。おどかさないでよ、も〜」


そう言って笑ったその男性《ひと》は、脱力するようにベッドに腰を降ろした。

思わず身を固くするも、「あはは」と気の抜けた笑い方をするその人に、すぐに警戒心は薄まる。


白衣に、学校の紋章だと教わった桃の花の白い文様が入っている紫の袴という服装から、学校の人なのだとわかった。


「おーい、聞いてる?」


夜空のいちばん深いところを切り取ったような目が私の瞳を覗き込む。

それと同じ色の髪は、古典の授業で「濡烏色」というのを習ったけれど、まさにこういう色なのだろうと思った。

長いまつ毛に縁どられ悪戯っぽく輝き、すっと通った鼻筋に、薄い唇。

どこを見ても欠点がない美しい顔立ちの人だった。



「巫寿ね、神職奉仕報告祭の祝詞奏上でぶっ倒れたんだよ。霊力切れだろうね。食って寝ればすぐ戻るから。もうすっかり夜だけど、お腹すいた?」

「あの、えっと、あなたは?」

「あれ、禄輪のおっさんから聞いてない?」



禄輪さんのことをよく知ったような口振りで呼ぶ。

そこでピンと来た。