心配をよそに、寮から神楽殿に向かう人の流れがあったので迷うことなく向かうことが出来た。

本殿よりかは少し質素な作りの建物で、みんなローファーを脱ぐと、入口に立って一礼してから続々と中へ入っていく。

それに習って入口の前で一礼し恐る恐る中へはいる。


目の前に広がったのは薄いカーテンのような布がひかれた大きな祭壇と、その前にある広い舞台。

数十人の生徒が、長椅子に座って雑談しながら始まりを待っていた。


一番近い所の空いている席に腰を下ろす。


少しずつ人が増えていき、神楽殿の中は話し声で溢れた。

親しく話す相手もおらず、嘉正くんたちの姿も見つけられず、仕方なく入学案内の巻物を解いて何となく眺める。



相変わらずミミズみたいな文字は全く読めず、なんとかひらがな数個をひろう。

くるくると巻きながら先を進めると、見慣れた書体の羅列を見つけた。


一行目は「禊祓詞」とタイトルのように大きく書かれ、「高天原《たかまのはら》に神留《かむづ》まり坐《ま》す……」と難しい言葉の並びが続く。

言葉は難しいけれどふりがながあって、私にでも読み上げることはできそうだった。



その時、ドン!ドン!と二回、太鼓が打ち鳴らされた。

驚いて顔を上げると、平安時代の貴族が着ていたような白い装束をきた男性が、舞台の隅に置かれた太鼓を叩いていた。