車内は暖かいはずなのに手指の震えが止まらい。
奥歯がカチカチと鳴る。青白い顔をする私に運転手さんが心配そうに声をかけてくれたけれど、上手く返事をすることが出来なかった。
病院には20分くらいで着いた。
先生が持たしてくれた1万円札でお金を払って、タクシーを降りる。
絡まりそうになる足を何とか動かして、受付でお兄ちゃんの病室を尋ねた。
連れてこられたのは「ICU」と書かれた病室だった。ドラマや映画なんかで見た事があった。
一歩一歩、中へはいる。
無機質な電子音が一定間隔で鳴り響く病室に、横たわる人がひとり。
頭には真っ白い包帯、口は酸素マスクで覆われ、目の周りには見るに堪えない青いアザがあった。
たくさんの管で繋がれたその人は、今朝とは全く違う姿になった、私のお兄ちゃんだった。