学生寮は鳥居から一番遠い、本殿の真反対側にあった。

修学旅行で泊まった年季の入った旅館のような建物で、奥から初頭部、中等部、高等部で棟が別れている。

中に入るとロビーは共用スペースになており、右の棟が男子寮左が女子寮。男子は二人部屋、女子は一人部屋といった具合に割り振られている。



部屋は至ってシンプルな和室で、勉強机や本棚、物置なんかの家具はあらかじめ揃えられていた。

日当たりがいいのか窓から柔らかい光が透かしてもれて、部屋の中は暖かく心地いい。

い草と木の香りが心をほっと休める。


本棚には既に教科書が入っていた。糸で綴じられた和綴じの教科書で「霊符大全」「妖生態学基礎」など聞き馴染みのない題名が並ぶ。

中には表紙にお札が貼られていたり、巻物なんかもあった。



リュックを置いて制服に腕を通した。

新品ののりがパリッとした肌触りに心が弾む。不安な気持ちが少しだけ和らいだ気がした。



リュックに入れていた入学案内の巻物を広げる。

神職奉仕報告祭は、神楽殿という場所で行われるらしい。


そう言えば、嘉正くんたちに一緒に行ってもいいか聞くのを忘れていた。


一人で行って、場所がわかるかな?