「市立大学病院まで、急いで下さい」


先生はタクシーの運転手にそう伝えると、励ますように私の肩を叩きドアを閉めた。


『お兄さんが意識不明で病院へ運ばれた、と中学校の先生から連絡がありました。危篤だそうです』


荷物をまとめて教室を出ると、試験官の先生にそう告げられた。

言われた言葉を頭が理解する前にタクシーに乗せられて、車が発進する。


カバンのそこにしまっていたスマートフォンを取り出した。電源を入れるとたくさんの着信履歴があった。

調べてみると、先程の先生から聞いた大学病院の名前が出てきた。


そこで、やっと状況を理解し始めた。その途端、両手がカタカタと震え出す。


お兄ちゃんが、危篤……?


どうして、だって今朝もいつも通りで。

私が作ってあげたエプロンを着て、タコさんウィンナー焼いてて、「行ってきますのおまじない」をするって私を追いかけてきて。


いつも通り何も変わらない朝だったのに。

なのに、危険な状態って。