「あの、志々尾くん」

「慶賀だよ! 敬語もなし!」

「慶賀、くん?」


そ! と肩を竦めた慶賀くんは「何?」と首を傾げながらどかりと私の前に座った。



「噂の編入生って言うのは」

「みーんな巫寿のこと話してるよ。妖の便りは風の便りより早いから。なにより、神修《シンシュウ》は初等学校から上がってくる奴がほとんどだからね!」

「シンシュウ?」

「俺たちの学校のことだよ!」


なるほど、神役修詞高等学校だから略して神修という訳だ。

それにしても、噂になっていると聞くとなんだか落ち着かない。

気の所為かもしれないけれど、確かに私の様子を伺う視線を何となく感じる。


「巫寿の家はどこの社を管轄してるの? 椎名って苗字の神職は、会ったことがないなぁ」

「社……? ううん、私の家は普通だよ。社とか、管轄とかしてない」



すると慶賀くんはお腹を抱えてケラケラと笑いだした。


「それは無いよ巫寿! 言霊の力を扱う者は必ず社を統治する家柄の末裔だもん! 父ちゃんや母ちゃんは?」

「両親は私が三つの時に死んだの」


あ、とバツが悪そうな顔をした慶賀くんの頭をポカリと叩いた人がいた。