禄輪さんが見えなくなって、ようやく当たりを見回した。

中は外見に比べて畳が引かれた質素な作りで、十数人くらいが座って雑談したり本を読んだりしている。


どこに座るべきか分からず、窓側の一番後ろに腰を下ろした。



どれくらいで学校に着くんだろう?

教科書や制服は全て用意されてるって聞いたけど、学校で渡されるのかな。

神々廻(ししべ)先生はどんな人だろう。すぐに分かるといいのだけれど。



そんなことを考えながら、揺れる度にぱらぱらとまくれる簾の隙間から外を見た。

森の奥を走っているらしく、土の匂いが濃く緑が続いている。



私も本か何か持ってくれば良かったな。



はあ、と俯いたその時。



「なあ、なあなあ!」


突然目の前に迎門の面を付けた顔がひょこっと現れて、思わず後ろに仰け反った。


「噂の編入生だよな!? 俺、志々尾《ししお》慶賀《けいが》! 名前は?」


迎門の面を少しずらしたその子は面の下から少しだけ人懐っこい顔をのぞかせニッと笑う。

同い年くらいの男の子だった。


「あ、あの……椎名です」

「……? それ苗字だろ。名前だってば!」

「え、あ、巫寿です」

「巫寿! よろしくな!」


差し出した訳でもないが私の手をとってブンブンと握るその子。

初対面で下の名前を呼ばれるのは初めてで不思議な感じがした。